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2022.09.27【対談】情熱と技術の出会いから。

【対談】情熱と技術の出会いから。

ディレクター 大﨑信哉 × プロダクトマネジャー

北海道から、世界に通用するダウンを。2018年、ディレクターの大﨑信哉(以下、大﨑)はHOKKAIDO DOWN PROJECTを掲げ、ブランド「Retar Nuy」を設立した。ブランドは今期3シーズン目を迎え、どのように変化しているのか。ブランド立ち上げ時より商品開発をバックアップしてもらっているプロジェクトマネージャーMさん(以下、Mさん)とともに、これまでを振り返りながらブランドへの思いやこだわりを語った。

動かしたのは、熱い想い。

大﨑:Mさんとの出会いは、15年ほど前、私がまだ函館で勤めていたときでした。当時お付き合いがあった縫製会社の社長さんに誘われた会合でお会いし、小樽でダウンを製造しているというお話が強く印象に残っていたんです。それから12年ほど経ちブランドを立ち上げて、ダウンを作ろうと考えたとき、真っ先に思い浮かべたのがMさんでした。

Mさん:記憶を頼りに会社を調べて、電話をくれましたよね。私も函館での出会いはおぼろげながら覚えていました。でも久しぶりに連絡がきて「ダウンを作りたい」と言われたときは半信半疑でした(笑)

大﨑:当時の私はビジョンだけ携えて、それを実現するための手段はわからない状態でした。ダウンについての知識もあまりなく、不安にさせてしまいましたよね。

Mさん:そうそう。実は大﨑さん以外からも、そうした相談の電話がくることは何度かありました。最初はその中の一人、くらいにしか思っていなかったのが正直なところです。

大﨑:それなのに一緒にやってみよう、と思ってくださったのはどうしてですか?

Mさん:他の人とは熱量が違ったのかもしれません。改めてお会いすると人柄の良さも感じました。この人となら行けるところまで行ってみよう、と思わせる熱さと魅力があったんでしょうね。

大﨑:大変光栄です。それが2018年の冬ですから、それから1年半ほどMさんに手取り足取り教えていただきながら、ダウン開発に奮闘しました。

こだわりのベクトルが異なる二人のものづくり。

大﨑:振り返ると、販売の現場しか知らなかった私にとって、1シーズン目の製品開発は想像以上にハードでした。何度もベースとなるデザイン案を練り直して、工場へ足を運びました。

Mさん:大﨑さんの理想を聞いて、まずは機能性を満たす仕様をいくつか提案しました。そこからブラッシュアップするのかと思っていたのですが、大﨑さんは「全部採用したい」って。技術を詰め込みすぎると、かえって機能性が失われたりスマートさに欠けることを伝えて再考してもらったのですが、先は長いなと思いました。

大﨑:販売の視点からファッション性を重視してアイデアを考えた私と、技術的な視点から仕様を提案してくださったMさんとでは、開発の方向性が異なり当初は意見が噛み合わないこともありましたね。私も長年販売に携わり、顧客や販売員の声を考えて譲れないことがあったんです。

Mさん:とはいえ大﨑さんの希望を全て叶えようとすると、ダウンの裏面の仕様が凝りすぎちゃって。サンプル作りの際は、工場泣かせのブランドだと思いました。

大﨑:失礼いたしました!ダウンの性能を活かす仕様は開発を進めながら学ばせてもらいました。1シーズン目の開発から4年ほど経ち、お互いが得意とする分野から指摘し打ち合わせを重ねた結果、今期は両者のこだわりを落とし込めた仕上がりになったと思っています。

3シーズン目となる今期のコレクションからは、新しいモデル[SOY Light]が追加されたことに加え、既存の型もモデルチェンジしています。

Mさん:モデルチェンジの目的は、機能性や快適性を追求すること。新しいパタンナーを起用して、パターンを引き直しました。1シーズン目のパターンから仕様を削ぎ落としよりシンプルにすることで、羽毛をはじめ高品質な素材の性能をさらに引き出しています。

大﨑:Mさんからパタンナーの方をご紹介いただいたことは、ブランドにとっても転機となりました。

Mさん:30年以上の付き合いになる、一番信頼しているパタンナーです。今後ダウンの品質をあげていくために必要な人物だと思い、「北海道でダウンを作る、面白いひとがいるんだけど」と誘いました。

大﨑:ありがとうございます。高い技術に触れ、私自身への刺激にもなりました。関係性を深めて、よりよいダウンへと進化させていきたいです。

ダウンを追求することで広がる夢。

大﨑:本ブランドのコンセプトは「MADE FOR HOKKAIDO」。北海道で暮らし、その環境の厳しさを肌で感じているからこそ作れるダウンを提供しているので、まずは北海道に暮らす人々に知ってもらい、次第に全国、世界へと広まってほしいと考えています。

Mさん:そのためにも「地方のショップが手掛けるオリジナルブランド」という位置付けから「海外でも通用するクリエイティブなブランド」に発展しなければいけないですね。

大﨑:おっしゃる通りです。プロジェクトの根幹にあるのは、食と自然ばかり注目されがちな北海道に、技術力という新たな価値を見出し、世界へアピールしていきたいという思い。さらに最終的な目標は、北海道に羽毛農場を作りダウン製造の6次産業化を実現させることです。ほぼ100%を輸入に頼る羽毛を北海道で生産することができれば、より発信力のあるブランドにできるはずです。

Mさん:課題はたくさんあるかもしれないけれど、面白いビジョンだと思います。大﨑さんはとても勉強熱心で、教えたことをすぐに吸収していく人。だからこそ私も本気になれるのだと思います。目標を形にできるよう、私は製品開発や人脈のパイプ役としてこれからも支援していきたいですね。

大﨑:嬉しいお言葉です。性能の高さはもちろん、こうしたブランドへの思いも多くの方に届けられれば、と感じています。

※記載の内容は2022年8月取材時点のものです。

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